2007年11月03日

クワイエットルームにようこそ

 狂っているのは、「私」か「世界」か。
 ただ、生真面目に流るる日常と、
「面白い世界」への羨望。
内田有紀演じる主人公・明日香は
現実との折り合いがつかず
やけ酒のツマミに睡眠薬を囓り
気が付いたら閉鎖病棟の一室に。
 隔離された山奥の精神病院。
そこの住民たちは皆
「外」で生きていくことの出来ないものたち。
明日香が患者に向ける視線は
はじめ狂人に向けるそれだった。
私は外の人間だ、自分に言い聞かせていく間にも
突きつけられる凄絶な現実、
患者たちとの交流を通して
「彼女ら」と「私」との間にあったはずの
境界線が曖昧になっていく。

 誰でも、社会から「狂人」のレッテルを貼られ
クワイエットルームに
閉じこめらないとは言い切れない。
周りから鬱陶しいと判断される、
それだけで生きにくい世の中。 
 
 明日香の回想シーンで描かれる
「外」の世界の住民も
よく見ると皆「普通」ではない。
「私」を追い込んだ「面白くない世界」と
「私」が追い込まれた此処、
どちらが「まとも」でどちらが狂っているのか。
 蒼井優が演じる拒食症患者の、
「世の中のシステムが悪い」という呟きが
さりげなく問いかける。
 自分の「空っぽさ」を世界のせいにしてはいないか。
 それは、とても普遍的な問いかけではないか。

 本作が監督2作目となる松尾スズキはいつでも
「世の中みんな狂ってる!」と叫び続けている。
そんな世の中に絶望しながらも
何だかんだで愛おしい。
自身が語るように「大人になりきれなかった」
彼は「つまらない」常識だのに
従順になる事の難しさを
どの作品でも主張している、気がする。
彼の作品を多く見ていないから自信はないけれど。
 
 この作品は、大仰な表現と笑いを交えながらも
社会から少しずれてしまった人が
自分の大きすぎる欠落をも
丸ごと受け容れる覚悟を決めることの
痛々しさを目を逸らさずに
きちんと描いているからこそ
ラスト、爽やかに笑い飛ばすことが出来るのだ。
でも、その爽やかさが、哀しい。


posted by B.B.Jim at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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